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東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)110号 判決

事実及び理由

一  前掲請求の原因事実中、本件考案の出願、登録から審決の成立にいたる特許庁における手続、考案の要旨及び審決の理由に関する事実は当事者間に争いがない。

二  そこで、右審決に原告主張の違法があるか否かを審究する。

本件登録実用新案の出願前公知の引用例に右審決認定の前掲計量ポンプ構造体が記載されていて、本件考案と引用例のものとの間に右審決認定の構成上の一致点があるが、本件考案が副連接杆4bの先端を連接杆6bを介して固定枢着座9bに枢着したのに対し、引用例がレバー腕242の先端をボルト258によつて固定枢着座280に直接枢着した点において、両者が相違することは当事者間に争いがない。そして、いずれも成立に争いのない甲第二号証(本件考案の実用新案公報)及び第三号証(引用例)を総合考較すれば、本件考案において摺動子、連繋軸を主、副両連接杆4a、4bの中央よりポンプB寄りに移動させ、また、引用例のものにおいて枢動ブロツク、ボルト・ナツト構造体をレバー腕の中央よりポンプ62寄りに移動させた場合、両者のポンプのピストン作用(直線往復運動)及びポンプ作用(吐出量)に差異はなく、ただ引用例においては、その移動をレバー腕の中央よりポンプ64寄りに行つた場合、同ポンプのピストンが常に正常な直線往復運動をしないのに反し、本件考案においては、その移動を主副両連接杆の中央よりポンプA寄りに行つた場合でも、副連接杆4bの枢着に連接杆6bを介在させるという引用例と相違する構成により、同ポンプのピストンが正常な直線往復運動をすること、したがつて、本件考案は引用例のものより送液流量比率変更の範囲がそれだけ広いことを認めることができるが、しかし、さらに、引用例においてレバー腕240、242とポンプ62とはリンク266、276を介して連結されていること、そして、さような構造が採られたのは、枢動ブロツク、ボルト・ナツト構造体をレバー腕240、242の中央よりポンプ62寄りに移動した場合、ポンプ62のピストンが正常な直線往復運動を行うことができるようにするためであることが認められるから、ポンプ64につき、枢動ブロツク、ボルト・ナツト構造体の位置にかかわらず、そのピストンを正常に直線往復運動させる必要があれば、レバー腕242とポンプ64との連結に右のようなリンクを介在させることは、本件考案に当てはめると、すなわち、副連接杆4bの枢着に連接杆6bを介在させる構成にほかならないが、当業者にとつて極めて容易に想到しうるところというべきであり、したがつて、また、本件考案が送液流量比率変更の範囲において引用例のものより広いという効果も、引用例の右技術から予測しうる範囲のものたるにすぎないというべきである。

そうだとすれば、右審決が、本件考案の引用例と相違する構成をもつて当業者が極めて容易に考えうるものであるとし、したがつて、本件考案は引用例に記載された技術的事項に基づいて極めて容易に考案することができるものであるから、その登録を無効とすべきものであるとした判断は正当であつて、右審決に原告主張の違法はないといわざるをえない。

三  よつて、本件審決の違法を主張して、その取消を求める原告の本訴請求を理由がないものとして棄却する。

〔編註その一〕本件における請求原因は左のとおりである。

原告訴訟代理人は本訴請求の原因として次のとおり述べた。

(特許庁における手続)

一  原告は登録第九二三三四二号実用新案(その名称「定比率流量送給装置」、昭和四〇年二月五日出願、昭和四六年三月五日登録)の権利者であるが、特許庁は、右実用新案につき、昭和四六年一一月八日被告からなされた登録無効の審判請求(同庁昭和四六年審判第八五六九号事件)に基づき、昭和四九年四月一〇日その登録を無効とする旨、本訴請求の趣旨掲記の審決をし、その謄本は同年六月一日原告に送達された。

(考案の要旨)

二  右実用新案の要旨は次のとおりである。

ポンプA及びBを各個の直線状作動部が互いに平行したまま同位相のもとに作動するように並設し、ポンプAには、その直線状作動部に両ポンプA、Bの軸線間隔にほぼ等しい有効長の主連接杆4aの基端を直接枢着するほか、その先端を連接杆6aにより固定枢着座9aに連結し、また、ポンプBには、前記主連接杆4aに等しい有効長の副連接杆4bを基端において連接杆11により間接に枢着するほか、先端においては連接杆6bにより固定枢着座9bに枢着し、更に、前記主連接杆4a及び副連接杆4bには各別の摺動子12a及び12bを嵌合してこれらの両摺動子を共通の連繋軸13により関連させてなる定比率流量ポンプ。(別紙第一図面参照)

(審決の理由)

三  そして、右審決は、右実用新案の要旨を前項のとおり認めたうえ、次のように要約される理由を示している。

右実用新案の出願前公知の特公昭三九―二〇五七七号公報(以下、「引用例」という。別紙第二図面参照)には「ポンプ62及び64を各個の直線状作動部が互いに平行したまま同位相のもとに作動するように並設し、モーター48によつて直接上下動させられるポンプ64には、その直線状作動部に両ポンプ62、64の軸線間隔にほぼ等しい有効長のレバー腕240の基端を直接枢着(294)するほか、その先端をリンク266を介してブラケツト260に連結し、また、ポンプ62には、前記レバー腕240に等しい有効長のレバー腕242を基端においてリンク276を介して間接に枢着するほかその先端をブラケツト280に枢着し、更に、前記両レバー腕240及び242には各別の枢動ブロツク244及び246を嵌合してこれら両枢動ブロツクを共通のボルト・ナツト構造体248により関連させてなる計量ポンプ」が記載されていて、本件考案と引用例のものとは、いずれも二個のポンプ(本件考案のA・B、引用例の62・64)を各個の直線状作動部が互いに平行したまま同位相のもとに作動するように並設し、駆動源に連結されたポンプ(本件考案のA、引用例の64)には、その直線状作動部に両ポンプの軸線間隔にほぼ等しい有効長の主連接杆(本件考案の4a、引用例のレバー腕240)の基端を、本件考案はピン5aにより、また引用例はボルト294により、それぞれ直接枢着するほか、その先端を連接杆(本件考案の6a、引用例のリンク266)により固定枢着座(本件考案の9a、引用例のブラケツト260)に連結し、また他方のポンプ(本件考案のB、引用例の62)には、前記主連接杆に等しい有効長の副連接杆(本件考案の4b、引用例のレバー腕242)を基端において連接杆(本件考案の11、引用例のリンク276)により間接に枢着するほか、先端においては回動できる状態で固定枢着座(本件考案の9b、引用例のブラケツト280)に枢着し、更に、前記主連接杆及び副連接杆には各別の摺動子(本件考案の12a及び12b、引用例の枢動ブロツク244及び246)を嵌合してこれら両摺動子を共通の連繋軸(本件考案の13、引用例の248)により関連させた点において一致する。そして、本件考案が副連接杆の先端(基端の反対側端部)を連接杆6bを介して固定枢着座9bに枢着したのに対し、引用例がその先端をボルト258によつて固定枢着座280に直接枢着した点において、両者は相違するとはいえ、引用例においてもレバー腕(副連接杆)242の一端がリンク(連接杆)276を介してピストン棒148に連結されている以上、レバー腕242の揺動に伴いポンプ62のピストンに直線往復運動を与えることは十分可能であり、その作用効果も本件考案のように副連接杆4bの両端に連接杆11、6bを介在させたものと格別の差異を認め難い。これに関連して、原告(審判被請求人)は、引用例においては(主)ポンプ64のピストンの最長ストロークより他方の従動ポンプ62のピストンの最長ストロークが常に短かいため、その吐出量が少ないのに対し、本件考案においては、主駆動されるポンプAの吐出量より従動ポンプBの吐出量が大きい場合を含む広範囲にわたり混合比率を変更させうるものであるから、両者はポンプ作用の点に差異がある旨を主張するが、両者のポンプにおけるストロークの差による吐出量の差は微少であるばかりでなく、主副連接杆上の摺動子を移動させることによる両ポンプ(AとBあるいは62と64)の吐出量の送液流量比率の変更によつて広い範囲にわたつて混合比率を変更させることができるので、ポンプ作用の点においても両者に格別の差異を認め難い。結局、本件考案の引用例との前記相違点は当業者が極めて容易に考えることができたものと認められる。

したがつて、本件考案は引用例に記載された技術的事項に基づいて当業者が極めて容易に考案することができるものというべく、その登録は実用新案法第三条第二項の規定に違反してなされたものであるから、同法第三七条第一項第一号の規定により無効とすべきものである。

〔編註その二〕本件に関する図面は左のとおりである。

第一図面

<省略>

第二図面

<省略>

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